京都新聞 2003年1月15日(水曜日)付け記事、「シリーズ 探訪 京滋の庭 79」 善峯寺 より
地面をはうように松の幹が伸びる。樹齢は六百年以上とされ、全長は四十bに及ぶ。 檜皮葺の多宝塔や経堂の前で、龍がたわむれるように見えることから「遊龍の松」の名が付いた。 一九三二(昭和七)年に国の天然記念物となり、「日本一の松」として寺の名物になっている。 京都・西山の中腹にある西国二十番札所の善峯寺は、約三方坪の境内を誇る。寺全体が山の傾斜を生かした回遊式の庭園になっており、ゆっくり散策すると、一周するのに一時間はかかる。 晴れた日は、比叡山や桂川など京都盆地の眺望も抜群だ。 善峯寺は一〇二九(長元二)年、比叡山で修行した源算上人が開いた。寺の場所は、京都御所を挟んで比叡山の対角繰上の南西の地にあたる。「西方浄土」を意識して造られたそうだ。 応仁の乱の兵火で一時は荒廃したが、徳川五代将軍、綱苗の母・桂昌院の寄進により再興された。 庭は、平安神宮の作庭などにあたった小川治兵衛が大正から昭和初期にかけて整備した。 境内のあちこちに池や滝、水路を配し、西山の山水を引いて水の流れを強調した。境内の多く場所で、耳を澄ませば、せせらぎの音が聞こえ、心を和ませる。 四季折々の花も魅力だ。 遊龍の松の西側には枝垂れ桜とカエデが重なり合うように育つ「合体木」が売る。幼少期を善峯寺で過ごした桂昌院が後年に植樹した。掃部光昭副住職(五十)は「根元もほぼ同じ所だから本来はどちらかが枯れるが、春の桜、秋の紅葉はどちらも見事。共存の精神を教えてくれる木です」と説く。 二年前から整備を進めるアジサイ園には、約三千株のアジサイを植えた。標高が四〇〇bほどある場所で、市街地より涼しいだけに、鬼ごろも七月中旬まで長続きするそうだ。 梅やヒラドツツジ、ボタン、茶花として珍重される「秋明菊」など季節を通じて何かしらの草花が楽しめる。 二月中旬まではナンテン(約一万本)の赤い実が見ごろだ。小鳥が実をついばむ姿はほほえましく、雪が積もると、赤い実がいっそう映える。
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